海外インターンシップでビジネススキルは身につくのか?

海外でインターンシップをする人が増えていますが、日本で言うインターンシップという概念は1日インターン、1週間インターンなど期間の短いものが多く、その多くは社会科見学の域を脱していません。こういったこともあってか、インターンシップをたとえ海外で経験しても大したスキルはないのではないか?という疑問を持っている人が多いと思います。実際のところどうなのでしょうか?

まず短期のインターンだと雑用しか任せてもらえないことすらあり、社会科見学がメインと海外生活体験がメインになってしまいます。長期の海外インターンであれば中途採用として十分採用してもらえるだけのスキルがつきますが、対日本企業の対応や日本国内で働く場合のスキルを海外インターンで磨くのは困難という側面もあります。一方多国籍な環境で働く力は間違いなく向上します。また非日系企業では職務経験として認知されるので、中途採用枠で採用されることが可能です。

企業インターンシップを合計2社1年半経験し、東京にて外資系企業3社で7年ほど働いた私が、この疑問を解説、深堀りをします。海外インターンに行くかどうか迷っているという方のみならず、そういった経験を持つ人を採用する人事の人にも参考になる記事になっています。

短期の海外インターンシップの経験はビジネス経験としては評価されません

“インターンシップ”という言葉から連想されるイメージというのは個々人によってさまざまなのですが、日本人は短期のインターンシップをイメージしがちです。本来の意味は就労経験であり、職務経歴として評価されるべき経験です。

新卒採用で短期のインターンシップが有用であるか否かというと、おそらくバイタリティと機敏性(agility)があると評価され役に立つでしょう。一方で、本来の意味でのインターンシップで職務経歴としてみなされるほどのビジネス経験は短気では身に付きませんし、評価はしてもらえません。また短期のインターンですと給与がでないことすらあります。給与がないということは給与を払わせるだけの価値を提供できていないことです。

企業側の立場に立って考えてみれば、期間が短いほど任せられる業務が限られてしまうということは想像できるでしょう。私が半年間のインターンをした会社では合計10人程度のインターンがみな半年程度の任期で仕事をしていたのですが、お客さんから担当がコロコロ変わるのはやめて欲しいというクレームを受けていました。逆に1年位の期間であれば社員とそれほど変わらないような扱いを受けることができます。給与は正規社員より低くとも新卒ならば職務経験なしに入社できない会社に未経験でも就労できるというのがインターン制度です。

対日本人向けのビジネススキルはコーチがいないと無理ゲーです。【大学生には厳しい】

私は大学在学中にインドの会社で日本企業相手に製品の売り込みをしていました。いわゆるBtoB/法人営業です。行く前のイメージとしては英語での仕事が難しいと感じていたのですが、行ってみたら日本語での仕事もなかなか難しかったです。バンド活動に熱中していた大学生にとって、ビジネス日本語が難しいとはまったく予想していませんでした。知識では分かっていても尊敬語ではなく謙譲語を相手に使って「○○様はおりますか?」と言ってしまったり、「○○平米」と相手に言われて「平米?」という使い慣れない言葉の意味が分からないなど散々でした。また、ビジネスメールというのも見たことがなかったので、「○○株式会社△△様 いつもお世話になっております。○○の○○です。 よろしくお願いします」という定型文も分からずグーグルで検索してましたがこれというまとめ情報見つからず苦しみました。インドでのインターン先に日本人が自分一人で(前任者は退任済み)、日本の客を対応するのは難易度が高かったです。

なお次に卒業後にインターンした先はバンコクの日系企業だったため、ここでよい日本人の上司に巡り合うことができイロハを教えてもらうことができました。正直海外にある日系企業の文化は日本と似ていて好きではないですし、日本人と現地人に対してダブルスタンダードを発動する人がいるなど、私は嫌いです。

しかし日本人と日本語でビジネスコミュニケーションするスキルは、日本人として長いキャリアの中で絶対にあった方が役に立ちます。海外で牧場経営するとかなら話は別でしょうが…

多国籍の環境で働くのに不可欠な柔軟な考え方が身に付きます

海外インターンをして私が特に良かったなと思うのはこの点です。「柔軟な考え方」が身に付くとはどういうことでしょうか?ずばりそれは多種多様な考え方に寛容に対応し、合理的な説明を加えるスキルです。ずっと日本で暮らしていると画一的な人、価値観しか周りに存在せず、30歳位で初めて外国人と仕事をすることになったら、おそらくストレスを感じます。多くの大企業でいまだに「グローバルな働き方」だったり「外国人との働き方」の研修を実施しているのはこのためです。研修を受けるよりも海外で働いた方が学びとしてはよほど効果的です。私の経験から具体例として2点あげます。

1点は朝の出社時間を守る/守らないの議論です。21歳まで日本で過ごしてきた私は、「遅刻は悪」「遅刻する人は信用できない」という風にすり込まれていました。フレックスの会社で働く今でこそ鉄道会社の遅延証明書がとんでもなく愚かで非効率と考えますが、当時は違いました。遅刻は悪だと日本で教育を受けると洗脳されるのです。インドでの会社は出勤時間がなんとなくしか決まっておらず10時~10時半ごろ出社で仕事が終わり次第午後5時半~6時半に退社というスタイルでした。公共交通機関が発達しておらず毎日オートリキシャ(3輪タクシー)で通勤していたため、通勤時間が20分~60分と流動的で決まった時間に出社するのが不可能という背景もありました。会社はともかく友人との待ち合わせでも何時きっかりに約束することは少ないので、日本では経験しないこうした環境での生活と仕事に慣れることで耐性がついたおかげで、今外国人社員ともうまくコミュニケーションを取れていると思います。今の会社ですとメキシコの同僚とよく電話会議をするのですが、現地の渋滞/通信事情などですっぽかされるリスクを織込んだ上で日程に余裕を持たせて仕事をします。私はTwitterで海外駐在員を多くフォローしているのですが、タイにいる日本人が「社員が3日連続で10分遅刻!」などと起こっているのを見かけます。そもそも渋滞がひどく定時出社は不可能な環境ですし、10分遅刻したからといって仕事に大した影響が出るとは思えません。

2点目は、顧客対応での「常識」についてです。21歳の私に日本のビジネス界の常識が身に付いていたとは思えません。しかしインド人同僚に「顧客に送るサンプルが汚れていた」件でけんか的な議論をしたことがあります。「なぜこんなにも汚れているサンプルを送るのか?当然きれいなものを用意するべきであろう」というのが私の主張で、インド人の主張は「顧客が見るべき箇所とは関係のない裏側が汚れているだけだから問題ないだろう」という主張が平行線を辿りました。

結局この件は私が折れたのですが、自分が「問題だ!」と思ってもインド人が「問題ではない」ということがあまりに多く、自分の主張や常識に”NO”を突きつけられ続けられました。

日本の常識は世界の非常識といいますが、若いうちに海外に出て自分が非常識であったことを体験するのはとても勉強になります。YES/NOを私がはっきり言わないためにドイツ人の友人にイライラされたり、英語を分かった振りしていたら注意されたりしましたが、失敗した数だけ学びが多く、失敗するなら若い方が許されるので良いです。

私がタイにいたときは、40代くらいで初めて外国に住んだのであろう日本人駐在員が自分が常に正しいと信じて「タイ人は仕事しない!タイは遅れている!」などという愚痴を日本人だけ集まるバンコクの飲み会でず~っと話していた姿をよく覚えています。そのように寛容性がなく日本人以外と分かりあおうとする姿勢のない人にはなりたくないですし、駐在員がとんでもない態度を取り、タイ人社員の半分以上が辞めてしまった。という例は実際にあります。多国籍な環境で働くことを早いうち経験して柔軟な考え方を身に付けておくことは重要です。

長期の海外インターンは職務経験として評価される

日本企業での社会科見学のようななんちゃってインターンではなく、海外で少なくとも1年のインターンを経験すれば、日本以外の多くの国、および日本でも外資系企業では職務経験として評価されます。

米国に住む私の親族によれば、米国では職務経験がない新卒は就労がそもそも難しく、インターンシップ制度を活用して就職につなげるのが一般的です。使えるかどうか分からない新卒を正社員として雇用してくれる日本の制度は学生をおんぶに抱っこでもてなす大変優しい制度とも言えます。

私の場合は大学卒業後1年の海外インターンを経て日本に戻り外資系企業に就職しました。日本企業であれば第二新卒といった扱いになるかもしれません。職務経験として評価されるということは、外資系企業に中途採用として採用されることができるということを意味します。新卒採用で門戸を開いていない外資系企業というのは多く、日本法人で数十人程度の会社は基本的に中途でしか採用をしていません。私が日本に帰って面接を受けたのは数十人規模の外資系企業が中心でした。日本で数十人といっても本国では上場しており1兆円を超える企業なども選択肢として入ってきますので、たかが中小企業とあなどってはいけません。

中途採用だけしかしていない外資系企業は1. 年齢層高め、2. 経験者が見つからないという問題を慢性的に抱えており、若い人を採用して育てたいという需要が一定して存在します。

海外拠点や外国人社員の多い会社は前項で解説した多文化で働くための柔軟な考え方を重視しますので就職しやすいです。第二新卒での就職を目指しても良いですが、外資系企業の方が1.働き方の文化が緩やか, 2.面接時に直属の上司になる人と面接をして上司&部署を選ぶことができるメリットがあります。

若いときは良い直属の上司に恵まれることが大変重要です。

まとめ

海外インターンの経験から7年も経つと転職活動では直近の職歴が最重要で、「昔はそういうこともされていたんですね」程度です。ですが日本人で海外での職務経験がある人はそれほど多くないので私の職歴を載せているLinkedInでは時々インターンの経験も込みで評価しメッセージを送ってくれる人事の方もいらっしゃいます。21~23歳の期間で海外インターンを経験したのでそこから得たビジネススキルというのは新卒採用から多国籍企業に就職しグローバルな環境で仕事をした人たちより抜き出たかと言うとそうではないと思います。

旧態依然とした日本の終身雇用制度、女は専業主婦といった価値観は着実に変化していき10年後、20年後を見据えたらグローバルの基準に近づいていくのは間違いなく、内需で回る日本経済で新卒採用と解雇されない正規雇用に甘やかされて仕事をするよりは英語力をつけて他国の人と同じ土俵で仕事をする方が良いと私は思います。

私がそのような考えに至ったこのようなそのきっかけになった本があります。「なぜ若者は3年で辞めるのか」という本です。私が大学生の時に読みましたが、年功序列が崩壊する理由を理論的に述べています。これはやや古い本で2006年出版ですが、最近の「ワークシフト」や「ライフシフト」と違い日本人が日本の未来について述べている点からも共感できますし、今となっても色あせない名著だと思いますので一読をおすすめします。

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